ロックダウン5日目。
今日は近所を少しだけ散歩してみることにした。
こうも家の中に閉じこもっていると身体も精神も病んでしまう。
そして外の様子が知りたい。
通りに出ると、さすがに交通量はかなり少なかった。
ときどき車やバイク、トライシクルが通りかかり、歩いている人もちらほら。
しかし人と交通が減っている以外はいつも通りの景色だった。
相変わらず道端ではヤギがメェメェと鳴き、ブーゲンビリアが綺麗に咲いていた。
歩いて10分の海沿いまで来てみた。
海もボートが出ていないこと以外はいつもと変わらない景色だ。
空気中の排気ガスが減ってより遠くまで澄んで見える。
人間の世界はこんなにあたふたしているのに、地球としてはほぼ何も変わっていないんだなぁと思った。
ただの綺麗な、真夏を迎えたドゥマゲテだ。
もしウイルスの存在に気づかなければ、きっと人間もいつも通りの夏を迎えていたんだろう。
でももう「コロナ前」に戻ることはできない。乗り越えるしかない。
家に戻り、仕事をしながらネットで情報収集をする。
最初に入ってきたのは、ルソン島がロックダウン(強化されたコミュニティ隔離措置)を4月末まで延長するというニュースだった。
ルソン島の「強化されたコミュニティ隔離措置」、4月末までの延長が正式に決定した模様。#フィリピン https://t.co/uLb3r6S4pK
— chie@フィリピン在住フリーランス (@chie23232) April 7, 2020
これでおそらくネグロスオリエンタルもロックダウン期間を延長するだろう。
しかし気になるのは、フィリピンがいつ解除の決断を下すかだ。
ロックダウンによって感染者数曲線をなだらかにできるのは他国の先例から見て明らかだと考えられる。
でもそれで油断して規制を緩めると、再びクラスター感染が起きてしまう可能性も高い。
もしウイルスを世界から完全に取り除けないとしたら、ロックダウンによって重傷者数を抑えて医療崩壊を防ぐことはできても、感染の症例が消えることはない。
結局なんとか医療を間に合わせる時間稼ぎしていく長期戦になる。
そうするとおそらくロックダウンの規制を緩めざるを得なくなるだろう。
治療薬やワクチンが開発されればこの状況も打開できそうだが、開発には年単位の時間がかかるとも言われている。
一方で集団免疫を得るにはこのウイルスは致死率が高すぎる。
国力のある先進国と比較すると、決して豊かとは言えないフィリピンにとってこの戦いは長期になるほど無理筋だ。
医療と経済に関してはとても希望が持てない。
唯一の希望は、国民の平均年齢が20代とかなり若いことかもしれない。
そんなことをつらつら考えていたが、そもそもフィリピンではロックダウンがロックダウンとして機能できていないと感じざるを得ないニュースがいろいろと入ってきた。
https://twitter.com/cnnphilippines/status/1247469391421165569
これは1,000ペソ(2,000円強)の補償を申し込むために長蛇の列に並ぶアンヘレスの人々を伝えるニュース。
「social distancingは見られない」というジャーナリストの皮肉コメントが付いている。
Thousands of workers who lost their income due to the enhanced community quarantine in Luzon are now relying on cash assistance through DOLE's COVID-19 Adjustment Measure Program https://t.co/4fVfbA8vNq
— CNN Philippines (@cnnphilippines) April 7, 2020
こちらは当初のロックダウン予定期間が間もなく終わるにもかかわらず、未だに補償金が受け取れていない何千人もの失業者たちに関するニュース。
おそらく先進国のようなITシステムやデータベースが整っていないため、手作業でものすごく時間がかかってしまっているのではないかと推測する。
フィリピンでなんらかの手続きをしたことがある人ならイメージできるだろう。
さらにフィリピンの場合、こういった補償金を役人側が横領したり、市民側が虚偽の申請で騙し取ろうとするのはもはやあるあるだ。
補償を決定することより、本当に必要な人に適正に行き渡らせることの方がずっと難しいのではないかとさえ思う。
いくら先進国の施策を追っても、ベースが根本的に違っていては機能しない。
炎天下、郊外からドゥマゲテに入るチェックポイントで長蛇の列ができてしまっている模様。
「ロックダウンなのにこれじゃあ本末転倒だろ」とのコメントに頷かざるを得ない。
オペレーションが悪すぎる。https://t.co/MGtqiDRmvy#ドゥマゲテ pic.twitter.com/NIKPmadfHK— chie@フィリピン在住フリーランス (@chie23232) April 7, 2020
極め付けに届いたのがこちらのニュース。
バコンなどの郊外からドゥマゲテに入るためのチェックポイントで長蛇の列ができてしまっているらしい。
これではロックダウンの意味がない。
感染リスクが上がってしまうのはもちろん、それ以前に熱中症で倒れてしまう。
これはやはりチェックのオペレーションがグダグダなんだろう。
そもそも外出許可証すら予定通り行き渡っていないくらい、ドゥマゲテのロックダウンは現場のオペレーションが後手後手にまわっている。
そういえば外出許可証だが、ネグロスオリエンタル州からドゥマゲテ市長に対し、ちゃんと一世帯に一枚行き渡らせるよう「respectfully requests」があったらしい。
ネグロスオリエンタル州の偉い人?が、ドゥマゲテ市長に対し市民にもっと外出許可証を行き渡らせるように要望した模様。
外出許可証の貸し借り等、逆に感染を広げかねない事態になっていることを懸念しているとのこと。(いいぞもっとやれ)#ドゥマゲテ pic.twitter.com/trE6V6n2jo
— chie@フィリピン在住フリーランス (@chie23232) April 7, 2020
はい、うちもちゃんと一枚欲しいです。
ルールを守った上で、街の経済にお金を落とすためにも。
ドゥマゲテどうか頑張って!
さて、今の状況から予想するに、ドゥマゲテでもおそらくロックダウンは延長されるが、規制は少しずつ緩くなっていく(緩めざるを得なくなっていく)んじゃないだろうか。
もはや「最初の厳しいロックダウンは何だったの?」という状態になる可能性さえあるかもしれない。
もちろん、どうせロックダウンするならちゃんと戦略立てて意味のある状態でやるべきだし、本末転倒の事態なんて本来であればもってのほかなのだが、フィリピンではその「本来」こそがとても難しい。
2日目の日記でも書いた通り、日本人の常識などいつも軽々と超えてくるのがフィリピンなのだ。