離職者が一定の条件を満たせば利用できる職業訓練校という制度。
これ、意外と活用している人が少ない気がします。
そもそもこの制度自体があまり知られていないのかも?
私は転職の合間の期間を利用して、この職業訓練校に3カ月間通いました。
実際に通ってみて、なんて良い制度なんだと感動しました。
そこで今回は、職業訓練校の何がどうよかったのか、実体験に基づいて書いていきたいと思います。
応募方法やカリキュラム概要などもあわせて紹介します。
そもそも職業訓練校とは?
職業訓練校とは
自治体や法人が無職者に対し、就業に役立つ技能や知識を、国の支援を受けて教育・提供する制度
のことです。
実施している自治体や法人によりますが、職業訓練校では主に以下のような分野を学ぶことができます。
- 医療・福祉
- 保育
- 情報処理
- 事務
- 旅行ビジネス
- 国際ビジネス
- 不動産ビジネス
職業訓練校の利用条件
職業訓練校は基本的に、技能や知識を取得して就職したい人なら誰もが利用できます。
ただ、雇用保険を受給できるかどうかの違いで、以下の2種類に分かれます。
- 公共職業訓練:雇用保険(失業手当)を受給できる人が対象
- 求職者支援訓練:雇用保険(失業手当)を受給できない人が対象
つまり、離職して雇用保険を手続き中もしくは受給中の人が対象なのが「公共職業訓練校」。
雇用保険非加入だったり既に受給が終わっている・もしくは受給期限が過ぎている人が対象なのが「求職者支援訓練」というわけです。
※この雇用保険の条件については追って詳述します。
職業訓練校の利用方法
離職者が職業訓練校を利用する流れは、大まかに以下のようになります。
- ハローワークの職業訓練校窓口で申し込む
- 書類や面接で選考を受ける
- 合格発表後、ハローワークで入校手続きをする
とにもかくにも、まずは自分が住んでいる市区町村のハローワークへ行くことがスタートです。
窓口で募集している学科や時期、選考方法などを詳しく教えてもらえる他、パンフレットなども置いてあります。
また、多くの自治体ではウェブサイト上でも募集情報を公開しています。
私の場合は東京都実施の職業訓練校だったため、「TOKYOはたらくネット」のページから情報収集しました。
私は当時千葉県に住んでいましたが、東京の方が何かと都合がよかったため東京に応募しました。
給付金と受講料
職業訓練校は給付金を受け取りながら利用できる
職業訓練校の最も大きな特徴がこれです。
学校に通いながら給付金が受け取れること。
先に紹介した公共職業訓練校の場合は、雇用保険(失業手当)を受給しながら利用することができます。
ここで特筆すべきは、雇用保険は自己都合退職の場合、離職してから待機7日間+給付制限3カ月間を過ぎてからしか受給できないはずなのに、公共職業訓練校を利用すると給付制限期間無しで受給できる点です。
つまり、3カ月待たずに給付金が受け取れてしまうわけです。
これは定期収入がなくなってしまった離職者にとって、かなりありがたいルールだと思います。
また、雇用保険の受給対象者でない場合でも、求職者支援訓練を利用すれば月10万円の給付金を受け取ることができます。
(ただし世帯収入の上限など諸条件あり)
私の場合は、職業訓練校の申し込みをした時点で離職から9カ月が経っていましたが、まだ雇用保険の受給可能期間だったため、失業手当を受け取りながら学校に通うことができました。
もし職業訓練校を利用していなかったら、待機期間3カ月を待っている間に離職から1年が経ってしまい、失業手当は受給できていなかったはずです。
職業訓練校は受講料が無料
職業訓練校は基本的に受講料が無料です。
しかも公共職業訓練校の場合は、別途交通費と受講手当まで支給されます。
(唯一、テキスト代だけ出費が発生します)
乱暴に表現すると、お金を払うどころか、逆にもらいながらスキルを学ばせてもらえるという夢のような仕組みです。
職業訓練校の選考
選考は書類や面接で行われます。
色々なサイトで合格するためのポイントが紹介されていますが、真偽のほどはちょっとわかりません。
そこで、私の場合はどうだったかを紹介します。
私が応募した東京都の職業訓練校は書類選考のみでした。
面接と違って直接熱意をアピールできないので、できるだけ熱の込もった文章を書くように心がけました。
具体的には以下のような内容を書きました。
- その分野を学びたいと思ったきっかけ、流れ
- なぜ独学ではなく学校に通いたいのか
- このスキルを就業にどのように生かしたいと考えているか
選考する側の思考を想像して、「通学をドロップアウトしなさそう」「本気で就職を目指していそう」と感じてもらえるような内容を目指しました。
また、第一希望と第二希望それぞれに志望動機欄がありましたが、私はどうしても第一希望のコースに行きたかったので、第一希望の方をあからさまに熱量高く書きました。
現時点での就職活動状況を書く欄もあり、そこには「まずは学校でスキルを身につけたいので今は情報収集のみにしている」と正直に書きました。
全体として自分の気持ちや状況を正直に書いたと思います。
これらのポイントが功を奏したかどうかはわかりませんが、無事合格することができました。
職業訓練校に実際通ってみた感想
さて、前置きがだいぶ長くなりましたが、ここから実際の体験談です。
通ったのは「国際ビジネス科」
私が通った「国際ビジネス科」は、「事務職として必要な英語力及び貿易に関する知識・技能を有し、貿易実務に対応できる人材の育成」を目的とするコースです。
期間は3カ月間で、具体的には下記の資格取得に必要な知識・スキルを学習します。
- 日商簿記3級
- 英文会計(BATIC)Subject1
- 貿易実務検定C級
- TOEIC600点
目指す就業先としては、商社・貿易会社・船会社・航空会社・百貨店・フォワダー(貨物利用運送業者)などが挙げられています。
授業は自治体の依頼先である民間のさまざまな専門学校で行われます。
私の場合は「資格の学校TAC」の渋谷校でした。
基本的には平日5日間、1日50分×6コマ、10時スタート16時40分終了というスケジュールした。
こうして概要だけ見ると、一般的な専門学校とそんなに変わらないように見えますが、実態はかなり違いました。
通ってみてわかった特色その1:何よりも就職が最優先される
職業訓練校では、知識や技能の習得は「手段」であり、目的はあくまで就職することです。
そのため、受講期間中も必ず就職活動を行うことが義務付けられており、下記のような特色があります。
- 毎月一定数の「就職活動日」が設定されており、その日は授業は休みになる。
- 専門分野の授業以外に、就職指南の授業も設けられている。
- 受講期間中であっても、就職が決まれば途中退校になる。(喜んで追い出される)
通ってみてわかった特色その2:受講規則が厳しい
職業訓練校ではなんと、基本的に欠席が認められていません。
やむを得ない事情で欠席する場合は証明書が必要です。(Ex.病欠:病院領収書と医師診断書)
該当日の基本手当と通所手当を受給しない場合は欠席できますが、その場合も理由を詳細に提示する必要があります。
また、全日程のうち出席日数が8割を切ると、各手当は受給中止になります。
遅刻・早退、内職やアルバイトをした際も書類提出が必要です。
その他、日誌当番、就職状況報告、就職面接証明など、いくつもの細かい義務が課せられます。
授業を受けてみての感想
授業の質はとても高かったです。
講師のみなさんの教え方・人柄が素晴らしく、全く未経験だった会計や貿易実務も、概要をかなり効率的に理解できました。
てっきり座学だけだと思っていましたが、ペアワークやグループワークもたくさん取り入れられていて、生徒がモチベーションを保てるように工夫してくださっていると感じました。
質問にもいつも丁寧に答えてくださいました。
一方で、これはもうしょうがないことなのですが、職業訓練校ではバックグラウンドの異なるさまざまな人が同じ授業を受けるため、授業内容がどうしても普遍的・包括的になる傾向を感じました。
例えば、生徒の中には日商簿記はすでに持っている人もいたりするのですが、そういう場合でも他の初心者たちと同様に全講義に出席しなければいけません。
そして英語の授業は特に、生徒一人ひとりのスキルにかなり差があり、「上級者は物足りないけど初心者はしんどい」という状況がどうしても起きてしまいがちでした。
生徒仲間について
ハローワークや入学時のオリエンテーションで、「職業訓練校では生徒同士のいざこざが多い」と聞いていたのですが、幸いなことにいざこざは全くありませんでした。
むしろとても雰囲気の良いクラスでした。
授業態度はみんな真面目で、仲が良く、でも馴れ合いすぎず。
無職者同士ということで共通の話題も多く、モチベーションをお互いに高め合っていける、とても理想的な環境でした。
事前に脅されすぎたのか、単に人に恵まれたのかはわかりません。
3カ月の学習で得たもの
1日6時間の受講はなかなかハードではありましたが、先生方や生徒仲間にも恵まれて、全体として楽しく修了することができました。
卒業後に4つの資格(日商簿記・英文会計・貿易実務検定・TOEIC)にチャレンジし、無事4つとも目標ランクを取得することができました。
これらの資格は実際、後に物流会社に派遣として就業する際に評価してもらえました。
また、私は海外に出てしまったため参加できていないですが、このときの生徒仲間は今も定期的に同窓会を開いて集まるほどの仲良しになりました。
人間関係でも得たものが大きかったと思います。
最後に:未経験の分野にチャレンジしたい人には特におすすめ
実は私は、職業訓練校に対して「なかなか就職できない人を国が引っ張り上げて就職させるための制度」という偏見を持っていました。
でも実際に通ってみたら、そもそも就職できなそうな人は選考で落とされるし、入学後もやる気がなければ容赦なく退校させられるという、とてもハードモードな制度でした。
ハードだからこそ、質の高い授業でしっかりスキルを身に付けることができるんだと思います。
中には失業手当だけを目的に利用する人もいるようですが、それだとモチベーションが足りなくて辛いかもしれません。
それくらい授業は真面目でハードでした。
開講学科の中に自分の学びたい内容がある人は、転職の合間に利用して損はない素晴らしい制度だと思います。
また、まだやりたいことが決まっていないけど未経験の分野にチャレンジしてみたいという人も、職業訓練校をその足がかりに利用してみてはいかがでしょうか。
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