フィリピン留学で予め知っておきたいことって何でしょう。
必要な持ち物
英語力を伸ばす勉強法
現地の物価
治安情報
etc.
いろいろあると思います。
でも私が実際にフィリピン留学したとき、思いもよらなかったことを「もっと調べておけばよかった」と実感しました。
それは国際社会における日本とフィリピンの関係です。
具体的には、歴史、外交、貿易関係など。
というのも、フィリピン人の先生たちと会話する上で、互いの国にどのような接点があるのか、これまでどのように関わってきたのかが結構トピックになるんですよね。
今さらながら少しずつ勉強しているところです。
そこで今回は、2019年現在における日本とフィリピンの国際関係上のトピックを、私の知っている中でいくつか紹介したいと思います。
フィリピン留学を予定している人はもちろん、すでにフィリピンに滞在中でフィリピンのことをもっと知りたいと思っている人も、よかったら読んでみてください^^
知らなくても何の問題もなく留学生活を送れますが、知っていたらさらに楽しめると思います!
<大前提>フィリピンという国の成り立ち
基礎知識として、現代のフィリピンという国がどのように生まれたかを把握しておくと、日本との関係性も理解しやすくなります。
ものすごくざっくりと流れを解説します。
フィリピン(the Philippines)という国名は、16世紀のスペイン皇太子フェリぺ2世に由来しています。
大航海時代に全盛真っ只中だったスペインが、紀元前のはるか昔から人々が住んでいたフィリピンの島々を植民地にして、スペインにちなんだ名前を新たに付けたためです。
スペインによる植民地支が3世紀半続いたのち、今度は19世紀末の米西戦争でアメリカが勝利したことで、フィリピンはアメリカの植民地になりました。
そして20世紀に入り太平洋戦争が勃発すると、1942年に日本がフィリピンを占領して植民地化します。
太平洋戦争で日本が敗北すると、アメリカがフィリピンを奪還。
その後1946年にフィリピン共和国として独立を果たしました。
実際、フィリピン国内ではこの3カ国の名残がたくさん見つかります。
アジアで唯一のカトリック教国、圧倒的な英語普及率の背景にもこの歴史があります。
フィリピンにもあった!戦国時代の「日本人町」
日本史の授業で16世紀以降南蛮貿易が活発になったことは習いますが、同時に多くの日本人が東南アジアの国々に移り住み日本人町をつくったことはあまり知られていない気がします。
日本人町がつくられたのはタイ、ベトナム、カンボジア、マレー半島、そしてフィリピンでした。
マニラ市内には日比友好公園があり、当時はこのあたりが日本人町だったと言われています。
フィリピンの地にこんなに昔から日本人のコミュニティがあったのかと思うと、なんだか不思議な感慨が湧いてきます。
フィリピン人は知ってて日本人は知らない「バターン死の行進」
フィリピンにとって日本はかつて植民地支配を行った国なので、フィリピン人の中にはその歴史を辛く思っている人、日本に対して今なお負の感情を持っている人も少なくないと聞きます。
私が直接話したことのあるフィリピン人(ほとんどは語学学校の先生)だと、「悲しい歴史ではあるけど今は別になんとも思っていないし、日本の文化も日本人の人柄も好きだよ」と言ってくれる人が多かったです。
(社交辞令の可能性もゼロではないですが、、、)
一方で、「私はなんとも思っていないけど、私のおばあちゃんはいまだに日本が嫌いみたい」とか、「俺の親戚は日本軍に殺されたよ」みたいな話を聞くことも稀にありました。
当たり前かもしれませんが、「フィリピン人」と一言で括っても考え方は人によって様々なようです。
ただ、日本がフィリピンでどのような植民地支配を行ったかをフィリピンに留学してくる日本人のほとんどが知らないことに関しては、結構共通して驚かれます。
「なんで学校で習わないの?」と聞かれたりもします。
当時日本がフィリピンで行った出来事には「残虐」と言われるものも「善行」と言われるものもありますが、特に有名なものの一つが「バターン死の行進」(Bataan Death March)です。
これは太平洋戦争で日本がフィリピンを進攻した際、降伏したフィリピン軍とアメリカ軍の捕虜たちを収容所まで炎天下100km以上徒歩で移動させ、2万人近くもの犠牲者を出した出来事です。
(犠牲者数は諸説あり)
死亡原因はマラリアの流行や疲労、飢餓、日本軍による暴行や処刑など。
アメリカ軍の捕虜も1,000人以上亡くなっているため、由々しい戦争犯罪としてフィリピンだけでなくアメリカや各国にも知られています。
フィリピンでは高校の歴史教科書に記載されているそうです。
当時の日本軍がどこまで意図的に捕虜の死を招いたかはわかりませんが、膨大な数の捕虜が死亡したこと、日本軍による暴行や処刑もあったことは事実として記録されています。
少なくともフィリピンを訪れる日本人は知っておくべきことではないかと私は思っています。
いずれ機会をつくって訪れてみたいです。
フィリピンにとって日本は最大の貿易相手国
日本は現在、フィリピンの輸出相手国3位、輸入相手国3位で、アメリカに並ぶ最大の貿易相手国になっています。
また、フィリピンへのODA供与実績も日本が2位に圧倒的な差をつけてシェア1位。
日本が援助しているインフラ整備事業も多岐にわたり、現在はフィリピン初の地下鉄建設も日本からの支援をベースに進められています。
実際に地下鉄を走る車両も日本のメーカーが製造するようです。
もちろん日本側も、フィリピンの今後の経済発展を見込んでいるからこそ融資しています。
2019年現在における二国間の経済面でのパートナーシップはなかなか強力と言えそうです。
でも私は日本人でありながら支援のことを全く知らず、「え、そうなの」と毎回驚いていてしまいます^^;
日本はフィリピン人労働者を求めている
日本がフィリピンから得たいものの一つとして、最近特に話題になっているのがフィリピン人労働者です。
人口減少が進む一方の日本では、外国人労働者の確保が国家政策として推進されています。
国内の外国人労働者は年々急増していて、フィリピン人労働者数は2018年時点で中国・ベトナムに次いで3位です。
今年に入ってからも、日本はフィリピンと改正入管法の協力覚書を交わし、フィリピンから特定技能労働者の大幅な受け入れ拡大を図っています。
フィリピンも国家政策として海外での「出稼ぎ」を推奨しているので、労働人材面においても二国間の強いパートナーシップがうかがえます。
フィリピン人と仲良くなると「将来日本で働きたいんだよね」と言われることも少なくないと思います。
一方で、「日本の仕事環境は厳しいらしいから不安」と言われたこともあります。
フィリピンと比べると確かに「大丈夫だよ」とは言いがたい^^;
日本も無関係じゃない「南シナ海問題」とは?
これもなかなか複雑なんですが、かなり乱暴に解説してみます。
1.南シナ海はどこ?
ここです。
2.どの国の領海?
実は国によって見解が異なります。
具体的には、中国・台湾・ベトナム・フィリピン・マレーシア・インドネシア・ブルネイの7カ国が領有権を主張していて、主張する場所が被ってしまっています。
そのため領有権争いが起きてしまっている。
これが「南シナ海問題」です。
3.なぜ領有権を取り合っている?
領有権を持つことで、南シナ海が持つ石油・天然ガス・魚介などの豊富な海洋資源を手に入れられることが大きな理由と考えられます。
また、特に中国においては南シナ海に軍事拠点を持ちたいという意図も見られます。
4.フィリピンの立場は?
フィリピンは南シナ海において、スプラトリー諸島の一部と東ボルネオ沖の領有権を主張しています。
近年フィリピンと最も対立しているのは、南シナ海ほぼ全域の領有権を主張している中国です。
中国は2014年、国際的な同意を得ないままスプラトリー諸島で人口島の建設を始めたために、フィリピンが国際仲裁裁判所に中国を提訴する事態に発展しました。
裁判所は「中国の主張に法的根拠なし」との判決を下しフィリピンが全面勝訴しましたが、中国は主張を変えず人工島および軍事施設の建設を続行しました。
領有権をめぐって緊張が高まった二国間でしたが、2016年から就任したフィリピンのドゥテルテ大統領は中国からの経済支援を重視して親中の姿勢をとり、先の判決には大きく触れないまま多方面で中国との共同事業を推進しました。
(中国側はもちろん大歓迎)
その流れのまま、2017年のASEANでは中国に有利なかたちで南シナ海行動規範が合意され、ドゥテルテ大統領は国内から批判を受けつつも中国との関係改善に成果を出してきました。
ところが2019年に入り、ドゥテルテ大統領は、スプラトリー諸島のフィリピンが実効支配する領海を中国船が航海している事実に対して中国に抗議し、これまでの親中路線とは異なる対抗姿勢を見せました。
(これはフィリピン国内の中国への反感を受け取ったと見せかけるポーズだという説もあります)
今年9月に行われた二国間の首脳会談では政府間組織をつくり南シナ海を共同で開発することで合意しましたが、フィリピン国内では今も反感が強く、南シナ海の領有権をめぐってはまだまだ先が見えない状況です。
5.日本はどう関係する?
実は南シナ海で今最も軍事衝突が懸念されているのは中国とアメリカです。
アメリカは中国の南シナ海における軍事施設建設を強く批判していて、同海域でアメリカ軍による軍事演習を行うなどして中国を牽制しています。
これはアメリカが、中国が南シナ海に軍事拠点を持つことや、外海にさらに進出していく脅威を認識しているためと考えられます。
この脅威は中国と地理的に近い日本にとっても同様で、国際仲介裁判も無視する強硬な姿勢の中国が、今後日本の領海に進出してくることも十分ありえると言われています。
また、アメリカとの国際関係を踏まえても、日本は中国を牽制すべき立場にあると考えられます。
この流れをざっくり知っていると、フィリピンの外交関連のニュースがなんとなく理解できるようになってきます。
日韓だけじゃなかった!フィリピンの「慰安婦問題」
これも私は恥ずかしながら知らなかったんですが、日本とフィリピンの間にもいわゆる慰安婦問題が存在します。
韓国と同様に、フィリピンにも「太平洋戦争で日本軍に慰安婦にされた」と主張する女性たちがいます。
また、ルソン島中部のラグナ州サンペドロ市には慰安婦問題を象徴する少女像も設置されていました。(2019年1月に撤去)
日韓の慰安婦問題と大きく異なるのは、現フィリピン政府は慰安婦問題に対して「日本からすでに謝罪も賠償も受け取った」という姿勢をとっていることです。
実際、日本政府が設立したアジア女性基金によって、元慰安婦への償い金支払いや医療・福祉支援事業が実施されてきました。
一方で、フィリピンの元慰安婦の中には日本政府に対して現在も謝罪と賠償を求めている人もいます。
日韓における慰安婦問題ほど大きく話題になることはありませんが、個人的にはフィリピンに来るにあたって知っておきたいことだと思いました。
最後に
以上、2019年現在の日本とフィリピンの関係について、いくつかのトピックを紹介しました。
正直、堅苦しい内容も多いしとっつきづらさもあるんですが、背景を一つ知ると連鎖的にいろいろなことに興味が湧いてきて、調べるのも楽しくなってきます。
そして実際にフィリピンに行ってからも、「あーこの教会はスペイン統治時代に建てられたのかぁ」とか実感を持ちながら観光が楽しめます。
英語力の向上にも効果的なはず。(多分)
フィリピン留学に行かれるみなさん、よかったらこういうトピックも現地のフィリピン人や先生たちと是非話してみてください!